「暴走する脳科学 哲学・倫理学からの批判的検討」

「暴走する脳科学 哲学・倫理学からの批判的検討」光文社文庫377

著者:河野哲也(立教大学文学部教育学科教授)
発行:2008年11月


題名がいただけないと思います。決してそんな感じではありませんでした。
まずは、デカルト以来の心身二元論から始まりメルロ・ポンティの現象学やらヴィゴツキー、さらにアフォーダンス理論へと、心や脳に関する哲学的な歴史を振り返っています。
「心」と呼ばれる働きが、実は環境との相互作用によって成立していること、そのような「拡張した心」という概念では「身体性」が重視されることなどが、述べられていきます。
非常に幅の広い分野からの文献が紹介されています。

fMRIなどの脳のイメージング技術によって「脳を読み解く」ことが可能かどうか、例えばfMRIを嘘発見器として応用し犯罪捜査に使えるのか、といったくだりは、ちょうど今オンエアされているキムタクのドラマ「MR.BRAIN(ミスターブレイン)」が描いている世界です。

あらゆることを、脳で説明してしまいたくなっているのが現代なのかも知れません。
だから、幼児教育と脳科学とで一儲けしようと企む人が出てくるのでしょう。
ポータブルな脳イメージングの機器が開発されたら、そのうち、遊びに夢中になっている子どもの脳の画像も見ることができたりして、「脳トレーニング」にさらに拍車がかかるかもしれません。
しかし、著者によれば、脳とは、「環境」と「身体」とのシステムの中に組み込まれているものだそうです。
まさに、幼児教育が重視してきたことだったりするわけです。

「脳科学」を概観するためにはよい一冊だと思います。

(松山東雲 相馬)

研究所の本棚
2009/06/01




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