『初恋のきた道』(我的父親母親)

監督:張藝謀
出演:章子怡 孫紅雷 
2000 中国・アメリカ

 

 さて、今月ご紹介するのはご覧になった方も多いかと思いますが、人気作『初恋のきた道』です。ビデオで見直してみましたが、いや、もう本当にきれいな映画ですねえ。現代の老いた父の死を弔う母と息子の場面はモノクロ画面で抑えた雪景色、いっぽう母の初恋を描いた1950年代はあざやかに黄葉した山や林に囲まれ、馬や羊が放牧されている村、どこまでも広がる黄金色の麦畑などに章子怡演じる招娣の赤やピンクの鮮やかな上着がはえて美しく、彼女の、綿入れで着膨れてころころとして走る姿がなんともかわいらしい映画です。男性陣も彼女の初恋の相手、後の夫を演じるチャン・ハオも息子役の孫紅雷も「美形」というわけではないのですが、それがまた、いかにもありそうという感じで、ともかくうっとりするような映画です。

   ただし、いかにも張藝謀映画らしいこの美しさがけっこう曲者で、よくよく考えてみると・・・まず、母と娘だけ、しかも母は盲目で手仕事ぐらいしかできない、男手もないこの家族がどうやって食べているのか。人民公社の時代ですから共同で労働し、共同で食べていたはず、映画の中の学校づくりの作業などにその片鱗は見えるのですが、とにかく労働シーンのまったく出てこない、のどかなのどかな映画で、それなのに畑にはたわわに作物がみのり、家畜ものんびりと草を食み、というユートピアみたいな世界です。また、この招娣という少女が、赴任した若い小学校の先生を好きになると仕事もせずに毎日先生の朗読を聞きに通ったり、子供たちを送っていく先生の一行を遠くから見ながらついていったり、反右派闘争に巻き込まれてこの先生が町に連れ去られ、戻るという約束した日には一日中雪の中に立っていたり、なんかものすごく暇そうだし、章子怡が演じているので一見そうは見えないけれどこの少女の行為ってちょっとストーカーもどきだし、と、この美しい情景、感情に訴える映画のために張藝謀が犠牲にしたものはあまりに大きく、そこを受け入れられるかどうかが、この映画を受け入れられるかどうかを決めるのではないかと思われます。
 

   かわいい、かわいいといわれるこの映画の章子怡ですが、ストーカーまがいに思い込んだら命がけの初恋を貫く姿は、後の『グリーン・デスティニー』『HERO』『LOVERS』での腕もたち気も強いお姫様をうかがわせるところがあります。
  息子役(章子怡との共演はない)の孫紅雷は悪役とか、やくざ役が多かった人ですが、この映画は普通の人の役で喜んだとか。『たまゆらの女』でも鞏俐を愛する獣医役で共演しています。
 公式HPはじめ、この映画

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映画・テレビ
2006/09/03




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