梁石日『カオス』 ★★★☆☆歌舞伎町を舞台に、様々な宗教や人種、性別の登場人物たちが織り成す狂想曲・・・といったところか。ニューハーフの「タマゴ」の存在感が抜群にいい。作品中では、主人公の李学英が恋焦がれ、強引に掌中に納めようと画策する対象として、日本人ジャズヴォーカリストの今西沙織という女性が登場するが、このヒロインたる沙織とは比べ物にならないぐらい、魅力的なキャラクターなのがタマゴだ。
風林会館前でタマゴとばったり出くわした。ジーパンにノースリーブの赤いシャツを着て、赤いサンダルをはき、肩まで伸びている金髪をなびかせている。眉毛を剃り落とした上に緑色のアイブローペンシルを引き、黒い口紅を塗っている。異様な化粧だが、同時に不思議な魅力を漂わせ、腰をくねらせて闊歩しているタマゴを女でさえ振り返っている。
このタマゴの魅力で★1個追加できるぐらいだ。ひょっとしたら著者も書きながらにして、それに気づいたのではないか?物語のラストは、冒頭の流れとは相反して、このタマゴを主役に終わる。
それにしても、歌舞伎町は、タマゴ同様不思議な魅力を発している街だ。繁華街ならほかにいくらでもあるが、渋谷や六本木とはちょっと違う、雑多な汚らしさと落ち着かきのなさと、それらが共存するために育まれてきたルールがもたらす奇妙な統制感が、なんともいえない魅力をかもしだしている。どれほど住人が入れ替わっても、歌舞伎町は歌舞伎町だ。決してオシャレでも粋でもないこの街が、私はなんとなく好きだ。
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