それはそれは、美しい暁の空。
何もかもが、日の出の太陽に黄金に染められていく、神のごとき世界の中で。
私は確かに、そこに旅の目的の「何か」を見たのだ。
年老い、霞む視線の先に、確かに美しく笑む、彼女を見たのだ。
* * * *
物心ついた頃には、すでに私は旅をしていた。
大人に手をひかれるわけでもなく、街から街へとただ一人で彷徨い歩き、ゴミ箱から食べ物を漁り、乞食のように物乞いしながら、その日をなんとか過ごしていた。
身体が小さいうちは、暴力を振るわれたり死にそうになったことも何度かあったが、その度、おせっかいなほどに優しい誰かが助けてくれ、そして、身体が治ったころには、そっとその誰かの元を抜け出して、また旅に出た。
スリをしたり、盗みをしたり、果ては体を売ったりして、どうにか金を稼げるようになったころ、私の隣には、小さな少女が一緒にいるようになった。
彼女もまた、親もないストリートチルドレンで、いつどこから流れてきたのか、気がつけばいつでも側にしゃがんでいるようになった。
最初は疎ましく思い、何度も彼女を置き去りにして夜のうちに街を離れたり、大声をあげて威嚇したりもした。
だが、いつの間にやら、また側にいるのだ。
何かに縋るような、澄んだ蒼い大きな瞳を見開いて、必死にこちらを見ているのだ。
その瞳に負けて、私は彼女を側に置くようになった。
生まれは良いのかもしれない、と思ったのは、その立ち居振る舞いの端々に見える優雅さと、何より目に鮮やかな金色の髪が、こんな腐った生活でも、一向に輝きが衰えることのないことに気付いた時だった。
見た目は、5、6歳といったところか。
口が利けないのか、声を聞いたこともない。
何かを尋ねても、首を立てにふるか横にふるかしか、反応がなかった。
目もどこか虚ろで、表情も能面のように強張っている。
よほど辛い思いをしたのか、その人形のような美しさと高貴さを併せもっている様は、余計に不憫で、だがどこか不気味だった。
街にはいつでも人が溢れている。
目の前を、まるで川のように流れていく。
幸せそうに笑う家族、喧嘩する兄弟、微妙に離れて歩く男女、仕事に向かう大工、おしゃべりに余念のないかしましい女性たち。
そんな、まるで別世界の様子を眺めながら、私と彼女は、お互いの名前など知る由もなく、また自分の名前さえ知らないまま、来る日も来る日も眺め続けた。