つくづく、思うのだ。
人生とは、いったいなんなのだろう、と。
生まれた家は、本当にどうということのない、ごくごく普通の家庭だった。
父はサラリーマン、母は専業主婦。
見合いで出会った二人の間の、次男として私は育った。
ただ一人の兄とは、兄弟喧嘩は当たり前にするが、それなりに仲良くやってきたつもりだ。
生活も中流、本当に平均的な収入であり、私は何不自由なく育てられた。
仲のよい家族だったのだ、本当に。
それが、両親によって作られた、巧妙なフェイクだと知ったのは、高校の時分だった。
大学進学も決まり、あとは高校卒業を待つだけだったあの冬。
突然、両親は私を呼び出し、こう告げたのだ。
私が、両親の本当の息子ではない、ということを。
父の弟夫婦が、早くに事故で亡くなったことは知っていたが、私はその事故の、唯一の生き残りだったという。
まだ赤子だった私を不憫に思い、両親は、実の息子のように私を育てたらしい。
突然、目の前に突きつけられた真実に、私は酷く動揺した。
自分の存在を疑ったことなど無く、安穏と暮らしてきた私には、それはあまりにも唐突すぎる話だった。
最初は疑り、笑い飛ばしたが、両親の目が笑っていないこと、そして気丈な母が泣き出したことで、事の重大さを思い知らされた。
もちろん、今まで家族として生きてきたのだ。
突然、家族ではない、などというわけではなく、突き放されたわけでもないのだが。
ずっとこの真実を隠してきたことを、心苦しく思っていた両親の苦悩は、今ならば分からないでもない。
悩みに悩んだ末に、私に打ち明けたのであろう。
しかし、当時の私はまだ若すぎた。
大学進学を理由に、卒業するなり私は家を出ることにした。
家から通える距離であり、両親は止めてくれたが、私は頑としてそれを受け付けなかった。
自分の中で物事を整理するに至って、このまま一緒に暮らすのは、あまりにも辛かったのだ。
私は、世界に一人だけで、唐突に放り出された気分になった。
そして、ずいぶんとひねくれた。
心配してくれる兄も、両親も、友人も、当時付き合っていた彼女も、すべて拒絶した。
家に足を向けることはほとんど無く、心配しては電話をよこす両親を、鬱陶しく思うようになった。
大学はなんとか卒業したが、その後、私は逃げるようにして生まれ育った街を離れた。
都会で就職した私は、日々の生活に忙殺されるようになった。