「奇妙な果実」が流れる夜に その日、高校時代の同窓会に出席した松雪は、20年ぶりに会う級友たちの顔を見ながら
自分が彼らから逸脱した時間の中で暮らしていた事を否応無く実感させられていた。
実のところ松雪は高校三年の記憶があまり定かではなく、自分が机を並べていた級友たちに関しては、
名前はもちろん当時の彼らの顔さえもほとんど覚えてはいなかった。
松雪が送られて来たこの同窓会の招待状に『出席』の記入をした理由には、漠然としたノスタルジーに駆られた事に加えて、
自分の現住所を誰が調べたのかの知りたかった点と、さらにもう一つの目的があった。
それは、結末を知ること無く放置してきた、若き日の『二人の友』の消息を確かめたいという思いからだ。
20年という長い時の経過の中で、彼は多くの人々と出会い、そして別れた。
しかし、彼にとって真に『友』と呼べる人間は、その二人以外には存在しなかったようにも思えた。
当時の松雪は自分を取り巻く得体の知れない違和感の中から逃げ出そうともがいていた。
否、『逃げ出す』という表現が適切なものだと言い切る事は出来ない。
『解放』を希求する者たちの『逃避』には、単なる否定的な意味合いだけが含まれている訳では無いからだ。
(もちろん、そこに『絶望』という感情が同居していようとも)
松雪が押し出された場所には『社会』が今も高々と掲げているあの『根拠のない希望』というものの姿は見受けられなかった。
そして、その場所で彼が見つけたものは、傷つきながら震えている小さな『二つの影』だ。
今にも消え入りそうなその二つの影たちは、悲しいまでの優しさで、互いの肩を抱き合い必死で呼吸を繰り返していた。
『西尾』と『玲子』、それがその二人だ。
「松雪、お前が来てくれるとは思わなかったよ。お前変わらないなぁ。
さぁ入れよ、もう始まってるんだ。おい、みんな松雪が来たぞ!」
幹事らしき人物に招き入れられ、彼は宴会の席についた。
何人かが松雪に酒を注ぎ、何人かが彼との思い出を語ってくれた。
そのうちの幾つかを松雪は何となく思い出す事が出来たが、大部分は『私の知らない世界』の話だった。
一人一人のスピーチが始まると、松雪は話している人物と誰かが持って来
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