第16回 原人型世界認識(13)仮説⑥「言語遺伝子」は本来は「哺乳」を調節する遺伝子……!?
2001年、言語に関する遺伝子「言語遺伝子」が見つかったという論文が発表されました。
それは「FOXP2遺伝子」という名で知られる、他の遺伝子の働きを調節するスイッチの役割を果たしていると考えられている遺伝子です。どうやら、この調節遺伝子※が、人間の言語に重要な働きを持っているらしい、と。
※遺伝子には、大きく分けて、体を構成するタンパク質をつくる構造遺伝子と、その遺伝子の「ON/OFF」を調節する調節遺伝子の2種類があります。
遺伝子には、A・T・C・Gの科学文字で三十億字分の情報が保存され、その文字の配列によってさまざまなタンパク質をつくられています。爪をつくるべき位置にいる遺伝子は、爪をつくる特定の文字配列だけを「ON」にし、他の文字配列は「OFF」にして爪を生成します。当たり前の話ですが、或る体の部位から、別の体の部位が生えてきたら困るからです。この遺伝子の文字配列の「ON」を、別の言い方で「発現」と言います。
そしてこの「ON/OFF」を調節する役割を果たしているのが、調節遺伝子と呼ばれる遺伝子です。この調節遺伝子のおかげで、体のひとつひとつの細胞には全ての遺伝子情報が保存されているにも関わらず、爪はただ限定的に爪になり、髪はただ限定的に髪になることが出来ています。「FOXP2遺伝子」とはつまり、この調節遺伝子のひとつです。
ただ、この遺伝子が単体で言語を扱っているというわけではなく(言語能力には、多数の遺伝子が関わっていると考えられています)、この遺伝子が調節する遺伝子の中に、脳内の言語ネットワークを発達させるのに欠かせない遺伝子が含まれているらしい、ということが明らかになったのです。
イギリスにおいて、特定の文法の理解に困難があり、唇や舌などの細かい口腔顔面運動にも困難がある、幾世代もまたいで言語に関して何らかの発達の遅れがある家系がありました。その家系を調査するうちに、症状が出ている人々において、或るひとつの遺伝子に異常があることが判明しました。それがこの、FOXP2遺伝子であったのです。
しかし意外なことに、FOXP2遺伝子は人間だけではなく、他の哺乳類にもあるのです。ネズミとヒトでは、発現するFOXP2タンパク質の700のアミノ酸のうち、3つに違いがあるだけのようです。つまり、このわずかな違いが、人間特有の言語ネットワークにとって、重要な意味を持っているようなのです。(参考:『歌うネアンデルタール』)。
もうひとつ重要なのは、哺乳類においてこのFOXP2遺伝子の働きは大脳皮質におい
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