『おくりびと』 日本映画名物<非常識満載>ドラマ

 東京でチェロ奏者として生活していくことが困難になった30代の男が妻と、故郷山形の亡き母が残してくれた廃業した喫茶店兼住居に戻り、納棺師の仕事を通して生や死の尊厳を体験していくお話。
 こう書けば秀作みたいだが、<日本映画によくある非常識>が満載で、せっかくの面白いストーリーが穴だらけのスカスカドラマになっている。

 もらったタコが生きているからと云って、わざわざ海まで返しに行く? もらったのは食べるためだろう、まさか茹でたら赤くなることを大の大人である妻は知らなかったの? それとも、生きているので海に返したら死んでたことが分かり、<死の意味>を主人公が考える体験を描きたかったのか。
 
 <旅のお手伝い>なる納棺師の新聞広告も現実にありそうもない。個人経営の葬儀屋にとって、チラシ広告と云えども大変な出費、こんなお遊びなんかするものか。面接で仕事の内容を知らせないまま採用する方、受ける主人公もバカみたいである。2度ばかり、現場に立ち会っただけで、深夜の自殺者をひとりで片付ける。納棺師に必要な真摯な心構えと熟練した技術を習得する過程がいっさい表現されていない。いつの間にか、一人前になっている不思議さ。この当たりでドラマそのものの真実味がなくなる。
 生きているタコに驚いた妻(芝居する広末涼子を初めて観たが、おぞましいほどヘタ)も妙な人で、絞めた鶏を首がついたままニコニコと食卓に出すかね。旦那の仕事を知り、相手の気持ちを理解しようとするそぶりもなく「汚らわしい」の一言で実家に帰る。戻ってくるや、「お金はいらないから止めて」と、どう生活していくか念頭にない。思考がほとんど小学生レベルである。
 妻をはじめ人物みなさん薄っぺらい。山崎努も、現在の仕事を始めたきっかけが9年前の妻の死らしく、9年のキャリアしかない。60代だろうが、それ以前どのような人生を送っていたのか。
 ラスト、父親を納棺する場で、地元の納棺師が出てきた主人公のリアクションも妙。出てきた時点で説明するでしょ。

 いわゆる<突っ込みどころ>を書き出したらキリがない作品だが、死を扱っていること、広末以外の役者(中でも山田辰夫が抜群)が巧いこと、演出が丁寧なことでなんとか最後まで観ていられた。その程度。

邦画
2008/10/02




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