五話**赤いコートを着た裸足の美女は、
「母親の居所を知りたいなら、あなたの大切にしているものをこの場所に持ってきて。」
と、取り出した一枚の地図に記されている場所に、赤いペンで丸く囲む。
「大切にしているもの?」
「そう。分かっているでしょう?」
…なんだ、それは。
唯一の母親の写真なら、大切にしているが。それ以外にこの地に持ち合わせてきたものなど、ない。
写真が必要なのか?
「…俺のお袋は、そこにいるのか?」
「それは、教えられない。あなたの母親は訳あって捕えられているの。
勘違いしないでほしいのが、私が直接関わっているわけではないの。
だから、深くは知らない。けれど、あなたの母親を救うのにはそれが必要なのよ。」
「捕えられている?!なぜ、誰が…」
「心当たりはあるでしょう?」
遠い、記憶を探る。
脳裏に、えぐられた傷の痛みが走る。
…思い出すのは、酒瓶を片手に酔っ払った親父だ。
あの日、俺は尊敬していた親父を殴ったんだ。
保身のために、お袋を売り飛ばしたといったあの、親父を。
売り飛ばした先は、大富豪だったという。
捕えられているなんて、聞いてない。
だとしたら、その大富豪に捕えられているというのか?
「さっぱり分からない。俺は、何も知らない。あんたが知っていることを全部教えてくれないか。」
「いったでしょう。わたしは、深くは知らない。あなたの母親が何かの理由で捕えられている。そして、それを救うにはあなたの大切なものが、いる。」
「俺の大切なものって何だ。母親の写真しかないぞ。」
「違うわ。もっと、大切なものよ。かけがえのないものよ。」
…何だ?
「よく考えて。答えがでないなら、行かなくてもいい。
考えたら、分かるわよ。」
「いえよ!」
ガシャン。
机のうえの、コーヒーカップが床に落ちて、割れる。
「…ふん。バカね。それが教えてくださいって態度なの?」
「…。」
「いいわ。あなたの命よ。」
は?
「あなたの命と、母親の命を交換するの。
あいつらは、あなたの命が欲しいの。」
何で、俺の命とお袋が交換なんだ?
大体、俺が死んでおふくろが救われるっ
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