其之参拾七生暖かい空気が館内を満たし、その場を埋めた
人々の額からは汗が絶えず流れ出ている。
ただ、それは決して淀んだ雰囲気ではなく、
黄色い声援を上げる女生徒たちに埋め尽くされていた。
「すごいな・・・これ、俊介効果か!?」
僕は、その女生徒の数に圧倒された。
そう、何ヶ月か前に雑誌に特集されたんだ。
その雑誌は、剣道誌という一般向けのものではなかった
のだが、そこから、口コミで火を噴き、
『今話題の高校生』としてファッション誌に掲載された
のが原因だろう。
その誌面には、正座をした俊介が面を外し、膝の上に
置いた状態で写されていた。
さすが、プロの撮った写真だ。陰影が俊介の引き締まった
マスクを強調していた。
ファンが増えるのは仕方ないことだ。
俊介自身困惑してはいたが・・・。
僕は、俊介に言われるように、変装して武道館内に
潜り込んでいた。
サングラスとキャップをかぶっていたんだが、女生徒の中
でさすがに、これは浮いてるんじゃないかなと自分でも
思った。
「おい。アレ、瑞樹じゃねぇ?」
「え?あ、ホントだ。アイツ、バレバレだよ・・・ハハ」
「俊介!瑞樹、来てんぞ」
「ああ、来てくれたんだな。よし、ガンバるかんなっ」
俊介たちが僕の方を見て、何やらクスクス笑っていた。
多分、こんなやりとりをしていたのではないだろうか。
僕は、この蒸し暑い中、剣道部の勇姿を見守ったんだ。
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団体戦はやはり力及ばず、二回戦敗退という惨たんたる
結果に終わった。
しかし、個人戦は、やはり順当に勝ち進み、
決勝、俊介対城北高校の石川という図式になった。
石川という選手は見た目にゴツく、力技で押してくる
タイプではないかと容易に想像がついた。
対して、俊介はスラッとした体型で、
こういった選手には押し負かされるんじゃないかと
僕は不安になってしまうほどだった。
でも、あの自信ありそうな俊介の声を聞く限り、
かならずやってくれると確信していた。
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