ついに目撃!平成10年初春 「恋は水色」編 その2平成10年
晩冬初春の北上平野。
東北本線を真北に向かう列車は、真西から差す夕日をまともに浴びます。寒冷地仕様の座席の床暖房は貧弱な私の足をあぶり、耐え切れずに立ち上がって西側のドアの脇に立ち尽くして熱を揉み解します。
就職活動をあきらめ整髪を忘れた私の髪は肩までとどき、ダウンジャケットの襟がガサリガサリと鳴る。稜線にかからんとする夕日が、キューティクル剥がれ落ちた私の髪を黄金色に照らします。
同時に肩の辺り、後頭部になんとも不愉快な視線を感じる。
振り向けば先ほど東がわの座席に陣取っていた地元のホスト集団、耳打ちしながら私をけなしあっている。立ち上がっている様子を「エエカッコシイ」だとでも思ったようです。
世の中には奇妙なことで異様な敵意や対抗意識を燃やしてくるヤカラもいるから恐ろしい。
それでも列車は進みます。岩手県北部は遠い。まるで田舎から出て勉学を極めんとするイーハートーブのグスコーブドリの如く、汽車さえ鈍いと感じる私。ブドリ少年は青雲の志に燃えて都に出、私は都に負けて北に向かう。
ああ、演歌の世界。
春のまだ短い日は落ち、午後七時過ぎの盛岡。九時近くになってようやく緑風荘のある金田一温泉駅です。それでも座敷わらし探訪がやめられない私です。
貧乏性ゆえにタクシーなど使わず、徒歩で駅から金田一温泉まで。東北にも春の足音は忍び寄り、雪は赤松の幹から円周になって融け去ります。解けた雪は馬淵川の水面をモクモクとうごめかせ、アスファルト道を静かにぬらす。
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