アドルフ・サックスに挑戦すれど・・・
2006.8.10 永井洋平
パリのモンマルトル墓地を歩いたときアドルフ・サックスのお墓を見つけて感激したことがある。ベルギーで生まれパリで永らく生活した彼は1840年代にサキソホンを発明したことで特に知られているが、その他にもバスクラリネット、サキソルン属楽器など管楽器に関する発明・改良が多く、楽器生産事業、奏法教育などでも実績をあげているので楽器開発史上で特筆されるべき人物のひとりである。サキソホン属の楽器は150年前に新しい楽器として登場したがそれが現在でももっとも新しい楽器である。つまり、それ以後は新しく出現して音楽界に大きな地位を確立できた楽器は電子楽器を別とすれば特に見当たらないのだ。楽器の創造で成功することが簡単ではないことが認識されよう。当楽器創造館はこのハードルが高そうなテーマに敢えてチャレンジを試みようとする人々のために立ち上げたものと云える。
私がヤマハでサキソホンの商品開発業務を担当した1960年代後半に果たしてアドルフ・サックスは音響学的にどこまで精査して設計したのかを追及してみたくなった。彼が見出した管の形状、寸法といっても19世紀半ばの技術レベルではそれほど大した研究はやってないのではないか、会社の研究パワーでやりなおせばサックス氏を凌駕する設計仕様が得られるのではないかと思ったのだ。
そこで当時の最良とされるアルトサックスの管の太さ、テーパー、音穴の大きさ、位置などのバリエーションを数種試作して改良の可能性をサーチしてみた。サーチが成功して見込みがあれば次の段階に進む計画であった。しかし結果は期待に反して、わずかに吹込み管(ネック)についての知見がいくつか得られただけに終わりひとことで言えばサックス氏の設計が非常に良く出来たものであり簡単に彼の設計の周辺をサーチするだけでは改良は出来そうもないことを認識させられ、そのときの研究テーマとしては中断してしまった。
第2回目に挑戦する機会を得たのはヤマハの管楽器事業がすっかり軌道に乗り業界に確固たる地位を築いた後の1990年
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