1.自動ピアノがまだ出来ないピアノ音楽の革新1980年代からピアノに近代電子技術を入れることが活発化した。最初に実現されて市場にでたのは自動演奏ピアノである。これはその昔に音響再生装置も普及していないころに高価格なロールピアノが主にアメリカで販売され同等な機能を持っていたのだがそれをコンピュータ技術により高性能な商品を安価に実現したものであった。半導体技術の進歩は自動ピアノに必要な装置を小型化してピアノ内部に組み込んでしまうことを可能にした。
開発初期に既に存在した予言が二つあった。そのひとつは、自動ピアノがさらに発展すれば「ピアノは機械が弾くものです。昔は人間も手で弾いていたそうだが・・・」と云われる時代が来るのではないか、というものである。つまり機械の方が演奏上手なので一流ピアニストが弾く音楽よりも高品質な音楽を自動ピアノが出力するようになるであろうとの予言である。また、もうひとつはピアノ曲についての予言であって「昔は人間が手で弾いていたので二つの手と各5本の指が動ける範囲の曲しか作曲されていなかったが、機械ならどんな音列の曲でも弾けるし、同時発音を増やした曲が弾ける。たとえば10本の手で弾いているかのようにも音が出せる。もちろん一本指で単音を弱く奏すことも出来る。ダイナミックレンジが広がって厚みのある豊かな音楽になるから、人間を感動させる度合いも大きい。このような新種のピアノ曲が自動ピアノ用に新しくどんどん作られていくであろう」という説である。
しかしながら今のところ、自動ピアノは普及時代に入って20年余が過ぎていろいろな場面で応用され普及は進んでいることは事実だが<ピアノ音楽の世界を革新させるこの二つの予言>はまだ当たったとはとても云えない。音楽の世界はそんなに簡単には変化しないのだ。人々は保守的で音楽の世界を革新したいという要求は少ない。特に指導的立場にある音楽専門家(既に有名な演奏家、教育家、評論家)は自らが長年かけて習熟し権威を得た世界が変わってもらっては困るという潜在的な願望もあろう。また自動ピアノの品質が人間ピアニストに対抗できる精細な品質に至るまで高度化することは技術的にまだ達成されていないことが理由であろう。
しかし将来の可能性としてはどうだろうか。この予言は当たる、あるいは部分的に当たる可能性はあるのではないだろうか。
まずは技術的な課題である自動ピアノの品質向上を実現し、本当に人間が弾くよりも良い音楽、人をより大きく感動させる音楽を出力できるようにしてもらいたいものだ。人間の身体能力には限界があるのだから、どんな一流ピアニストでも達成できていない弾き方がある筈だ。自動ピアノの能力に合わせた新曲では比較が出来ないので、まずはショパンの曲でもベートーベンの曲でも
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