「アンドリュー・ワイエス―創造への道程(Andrew Wyeth:Emotion and Creation)」展の記憶2(2008年積み残し展覧会感想)

 Bunkamuraで開催された「アンドリュー・ワイエス―創造への道程(Andrew Wyeth:Emotion and Creation)」展は、ワイエスが主題として選んだ風景や人物が存在する二つの土地に従い、二つのパートに作品を整理して並べていた。

 一つは、ワイエス家が夏を過ごす別荘があった北部メイン州の海辺の町ポート・クライド周辺、もう一つは生まれ故郷のペンシルヴェニア州チャッズ・フォードの丘陵地帯である。通常、著名な画家の多くはさまざな土地に旅をし、人生の軌跡においてもいくつかの土地に移り動く。時系列に沿って展示すれば、その画家の視点の先にある風景が変わり、交友の範囲が変化する。内面の軌跡もまた時系列に沿って展示されたほうが観る者にとって掴みやすい。

 ところが、ワイエスの場合には、ほとんど全ての作品がメイン州の海辺の町とペンシルヴェニア州チャッズ・フォードという二つの土地から着想を得て、そこで制作されたものなのである。となれば、時系列的な展示構成よりもロケーションに基づく展示区分も頷けるだろう。しかし、この二つの土地に分けて区分する方法には、もう少し、深いわけがありそうである。

 日々の糧を獲得するために土地に縛られる生活者とは異なり、自由に画題を捜し求めて何処にでも移動できるアーティストの場合、たった二つの土地にへばりつくようにして制作を続けるということは、そのこと自体がポート・クライドとチャッズ・フォードという固有名詞を持つ、この土地への執着の証である。この土地の何かがワイエスを魅了し呪縛したのだと考えるほうが理に適っている。

 二つの土地がワイエスを魅了した第一の要素はそれぞれの土地の気候や風景等どちらかといえば自然の要素である。図録にはそれぞれの土地について、そして、その土地で生まれた作品についてワイエス自身が述べた言葉(下記)が掲載されているが、その言葉こそがこの第一の要素を如実に物語っている。

メイン州について  「クモの巣のようにたよりなく、色は淡く、風は強く、時々霧がかかったりする。まるで屋根裏部屋でひび割れた骸骨が、かたかたと音をたてているような印象がある。」

「私にとってメインはまるで月の上を行くようなものだ。月の表面でふわふわしているものがさっと吹き飛ばされてしまうように感じる。メインでは総てのものがものすごい速さで衰退してい

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2009/01/03




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