[Y09] 公園(鉄棒) 若い男とヤルことしか考えていない女。欲望満たし、金を渡して、満足して帰っていく。
金は好きだ。だから、甘い言葉を耳元で囁き、相手の望むところに指を這わせる。だけど、それは仕事の延長。本気で女を抱きたいと思うことなど、今の自分にはありえない――。
一仕事終え、シャワーを浴びにマンションに戻る。家の前でタクシーを降りた拓海だったが、飲み物がないことを思い出し、コンビニに寄る事にする。
何気なく時計を見ると、すでに深夜1時を回っていた。それにしても、空が明るい。拓海が空を見上げると、そこには見事な満月が夜空一面を照らしていた。
「――?」
微かだが、ギターの音が聞こえる。音の方に目を向けると、そこは砂場とブランコ、そして鉄棒しかない小さな公園だった。その鉄棒の前で、誰かが地面に座り込んでいる。どうやら音源は、その人影からだったようだ。拓海は、引かれるように彼女に近付く。
――いつもの夜、一人で歩く、心に、明日への不安を抱き――
若い女性の声。柔らかく、穏やかだが、芯のある歌声。
――わたしはどこに、わたしはここに――
突然、歌声が止む。月明かりの下、振り返る彼女の目が拓海を捉えた。どこかまだ幼いが、整った顔立ち。顎のラインまでの黒い髪、ジーパンに汚いスニーカー。
「邪魔したかな」
拓海は彼女の前まで歩み寄り、そしてしゃがみ込んだ。明らかに夜の商売していそうな拓海の姿に、あからさまに警戒する女性は多い。しかし、彼女は拓海の顔を一瞥しただけで、すぐに「そんなことないです」と返事をした。歌声とは違って、か細い声だった。
「綺麗な声だね」
「ありがとうございます」
「人のいるところじゃ歌わないの? 折角のいい歌なのに」
「たまに、駅前の広場でも……。だけど今日は、一人で練習なんです。今度、ライブがあるから」
「へぇ。もしかして、プロ目指したりしてんの?」
「……おかしいですか?」
顔に、警戒の色が表れる。自分の聞き方がまずかったのだと、そこで拓海は気が付いた。拓海は静かに首を横にふり、「そうじゃないよ」と弁明する。
「ただ、プロ目指してる人って多いけど、僕の周りでも成功した人なんて、一人もいないなぁって思ってね」
結局、金とコネが物を言う世界だから――。拓海は思っていた言葉を飲み込む。すると彼女の顔がふと緩んだ。
「あなたは、目指していないんですか?」
「プロ?」
「誰かに、認められる存在に」
「認められる……ねぇ。他人に認められるような仕事じゃないからね。見てわかるだろ、ホストやってんの
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