[Y05] 山内探偵事務所(夜逃げ)

 日曜の昼下がり。春の心地よい陽気の中、一日中暗い室内で居眠りしている山内のところに、咲子は淹れ立ての熱いコーヒーを運びに行く。
「そろそろ約束の時間じゃないんですか?」
 山内は何も言わずに目を開き、一拍おいてから頭上で両手を組んで大きく伸びをする。
「もう、2時か」
「せめて髪でも梳いてください」
「ああ」
 そう言いながらコーヒーカップに手をかけ、音を立ててその液体を口に含む。
「美味しいよ、さっちゃん。ありがと」
「はいはい」
 山内はだらしなく空けていたシャツのボタンを閉め、手櫛で髪を整える。机の上に置き捨てられた眼鏡をかけ、壁にかけられている鏡を覗き込んだ。そろそろ髭を剃らなきゃいけないなと思っていると、入り口の方から扉をたたく音が聞こえてきた。咲子が客を招き入れる。時間はちょうど、約束の2時だった。
「山内さん、千脇様がお見えになられました」
 咲子が案内してきたのは、高級ブランドのスーツを身にまとった50歳くらいの中年男性。電話の口調からも感じ取っていた印象はやはりそうだったと、実物を見て確信する。金持ちのワンマン社長といったところか。どうも仕事柄なのか立地条件のせいなのか、いろんな社長と縁がある。
「どうぞ、お掛け下さい」
 咲子は一礼して奥に戻る。コーヒーでも淹れているのだろう。軽く名刺の交換などし終わった頃、タイミングよく咲子がコーヒーを持ってくる。
「早速ですが、用件は…人探しでよろしいんですよね」
「はい。これが、妻の写真です」
「拝見させていただきます」
 封筒の中に入った二枚の写真を丁寧に取り出す。一枚目に写っているのは、幼子をおんぶし、片手で男の子の手を握った美しい女性のはにかむ笑顔だった。化粧はしていないものの、端正で綺麗な顔立ち。4、5歳の男の子はしかめっ面で、母親の手をぎゅっと掴んでいる様子だが、母親に似たのかこちらも綺麗な顔をしている。
 もう一枚は、そこから何年も経ったもののようで、カメラを意識している写真ではなかった。隠し撮りのようなショットで、庭先で花壇をいじっている女性の横顔だった。先程の写真より歳を取っていたが、まだまだ十分美しかった。
「妻は写真嫌いだったもので、古い写真しかありませんでした」
「こちらは、何年前の?」
「妻が夜逃げする直前の写真です。もう、5年前になります。35の時の写真です」
「36!? 随分若く見えますね」
「もう一枚の方は、私と籍を入れた頃の写真です。23の頃のものです」
「はぁ…」
 ということは、17年前の写真である。現在、この

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Act.1 --yellow--
2006/07/15




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