[Y03] ホストクラブ彩(免疫)

 薄暗い照明。
 時折店内に響くコール。
 隣に座る女のくだらない愚痴。
 そして、くだらない俺。

「――っていうのよ。ねぇ、聞いてる?」
「香澄さんの話を俺が聴かないわけないだろ。その男はきっと、香澄さんに――」

 女なんて、簡単なものである。こうして1年勤めているだけで、女が俺に何を要求しているのかが分かるようになる。女は大体にして、自己中心的な生き物である。中学や高校時代に女と付き合っていた頃は女のその考え方が理解できなかったが、こうして今思い返してみれば、当時の女なんて今俺の付き合っている女達に比べたら可愛いものである。
(それも、俺がまだ子供だったからか――)
 初めて女の理不尽さを知ったのは、中学入学早々のころだった。大して女にも興味をもてなかったこの時期、副担任だった音楽の先生に童貞を奪われた。一方的に快楽に溺れる女。初めてのセックスは、「こんなものか」で終わった。
 一度体を交えてしまうと、女の態度は豹変する。この女だけではなかった。所詮女が求めているのは男の体だけ、子宮が欲するのは種だけだ。そのことを中学時代に悟ってしまった俺は、周りで女の体で騒ぐ同級生をいつもくだらないと感じていた。くだらない生き物にくだらない幻想を抱くくだらない生き物。性交で得たものは、色褪せた世界と女に対する免疫だけだった。

 適当に男に飢えた女と話しながら、隙を見ては店内を見渡す。ここに来るのは、旦那の体に飽きた女や、金で男を思い通りにしたい女、金で女を思い通りにしたい男の世話をしている女、つまり同業者が多い。
「拓海さん、ご指名入りました」
 ボーイが俺に耳打ちする。
「香澄さん。それじゃあ、また後でね」
 不満そうな女に笑顔を向け、その席を交代する。代わりにやってきたのは、三枚目だがノリのいい後輩のシンである。
「誰?」
「あそこです」
 ボーイが示したのは、白い服を着た品のいい女。
「こんばんは、詩織さん。飲み物、何がいい?」
「あなたに任せるわ」
 俺はボーイに少し高めのブランデーを頼み、彼女の顔を見つめて話しかけた。

Act.1 --yellow--
2006/03/04




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