西武新宿線の秘密梅雨の時季は、いろんなにおいがあちらこちらに散らばっている。
汗とか体臭とか加齢臭とかカビ臭さとか。
排水パイプから立ち上る臭いだとかゆうべのカレーの残り香だとか。
「朝の西武新宿線のニオイがたまらない」と、
息子は最近通学前の防臭に力を注いでいる。
「あの朝の電車のニオイを嗅ぐと、自分はああはなるまいと」
なかなかいい心がけである。
しかし一日着用していた息子の制服のワイシャツなどは、
私的にはかなり、お手上げ状態なほどに臭う。
「帰り道はいいんだよ。問題は朝だ」と、
ワケのわかるようなわからないようなことを息子は言う。
以前使っていた大江戸線、その前に使っていた有楽町線などに比べると、
西武新宿線は乗客の雰囲気が違う。乗っている人種が違うと、
息子は転居間もなく気づいたようだった。
まあまあそりゃあね、都庁やら六本木やらに向う大江戸線に比べたら。
西武新宿線沿線には、貧乏学生がたくさん住んでいるみたいだ。
家賃が安いんだろう。
ギター背負った若者とかをよく見かける。
食生活も衛生状態もよろしくない若者なんかもいるんだろう。
それから息子いわく、
「やたらにデカイ男が多いんだけど」
うん。私も結構たくさん見るよ。
なんだかわからないけど、やたらに身体の大きな男。
田無駅のホームで電車を待っていると、なぜか次々現れる、巨大な若い男。
のっぽ、ではなくて、デカイ。たてよこデカイ。
ビジネスマンではなさそうだ。ええい、何者よ?
ひょっとしてどこかに、秘密結社「巨人クラブ」とか存在してるんじゃ?
「隣に立っていたデカイ男の頬に、【美術】って上手な字で書いてあった」
息子の証言に、娘と私は大笑いをした。
まったく意味がわからない。
謎である。
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