信長の親衛隊信長の親衛隊 戦国覇者の多彩な人材/谷口克広(中公新書,1998)
当代きっての織田信長研究家、というか信長マニアによる、ややマニアックな歴史読み物。
羽柴秀吉、明智光秀、柴田勝家といった信長の武将たちは戦国歴史ドラマの常連で、あまりに有名だが、小姓、馬廻、吏僚といった側近たちは、あまり知られてない。例外として、後に武将に出世した一部(前田利家、佐々成政、堀秀政など)、行政官として活躍した人(村井貞勝など)、小姓として例外的に有名な森蘭丸(本当は森"乱"成利というらしい)などがいるが、長谷川宗仁、木村高重、岩室長門守、明院良政など、よほどの歴史マニアしか知らないような名前が多いのだ。まあ、現代風に言えば、秘書、ボディガード、事務官といった役割なので、歴史の表舞台に出てこないのは当然ではあるが。
そういった裏方は、信長だけでなく、戦国武将の誰にもいただろう。だが、織田信長はそういう実務家たちの登用や使い方が特にうまかったらしい。著者は史料を丁寧に当たりながら、信長の組織術の妙を解き明かしている。
さすがに信長マニアの著作だけあって、情報量は膨大。華やかな武将たちの影に隠れた多彩な人材たちに光を当て、織田信長政権の知られざる一面を紹介してくれる。
しかし、確かに多様な人材がいることはよくわかるし、歴史書や小説などを読む時などに参考になるが、正直なところ、読んでいてそんなおもしろいとは思えなかった。題材が地味なせいもあるが、あまりに事実の羅列になりすぎていて、資料としては評価できるが、読み物としてはもうひとつなのだ。
実は、この本に名を連ねる側近たちは、ほとんどが本能寺の変で殺されてしまう。その悲劇的な最後に向けて盛り上げていくような工夫があれば、もうちょっとおもしろかったかもしれない。専門書じゃなくて新書なのだから、ノンフィクションといえどもある程度の演出は必要なのでは―、なんてことを思った。
この本が発行されて7年後に、姉妹編とも言える『信長軍の司令官』が出ているが、それはまた別の機会に。
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