絶対感度

新型インフルエンザが高校生を中心に広まっていることから、今朝の天声人語に、若い世代だけが聞き取れる高周波の音があることが書かれていました。『何にでも鋭く反応するのが若さである』というその文面から、抗い難い老化というものがあることを改めて知らされた思いがします。

豊かな感性や、感度良好なのは年齢には関係ないと認識し、私自身はとりわけその部分を大切にして生きています。しかし生命サイクルの持つ絶対感度は越えられないものなのでしょう。

先ごろ2000回公演を成し遂げて、89歳の誕生日を迎えた森光子さんを追う番組を観ました。ドキュメントタッチの番組そのものは、思ったほどに感動を覚える構成ではありませんでしたが、一人の女優が2000回という舞台をやり遂げたという事実はしっかりと伝わってきました。

一番印象に残ったのは、「正直ファンのためというよりは自分のためにやってきた」というご本人の言葉です。ひたすら女優として、表現者として、与えられた場をやり遂げたいという、強い意思がもたらす確固たる点のひとつ一つが、2000回という見事な線になったのです。

私はその「放浪記」なる舞台を拝見したことがないので、森光子さんと舞台についてはコメントする立場にありませんが、この女優さんの偉業は、人の老化と、人の達成力との間に、先ほどの『絶対感度』なるものを越える、精神の『絶対領域』があることへ思いを馳せさせます。

果たしてその『領域』を表現するにはどんな言葉があるのでしょうか。

真摯な努力、飽くなきチャレンジ、掲げ続ける夢・VISION、社会貢献、美学、そして自分自身と調和して生き抜くこと!?

それらのすべてが混ざったものかもしれません。その内側に持ち続けるパワーやエネルギーこそが、人生において、ひとりひとりが掌中にすべきもの、希求していきたいものであることを感じさせてくれます。

若さには眩しいくらいの特権があるようですが、老化には柳のような、枝垂れて折れない強さがあります。加齢していくことは自己発見の長い道のり。素敵なインナー・トリップです。

2009/05/22




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