月の目を持つ猫今日は少々長いですぜ、へっへっへ。
夜。
今日は本当に静かな夜だ。
金色に輝く満月の引力に導かれるかのように、ボクは窓から月をぼうと眺めている。
この行動に特に意味は無い。
ただ純粋にボクは月というものが好きなのだ。
呼吸をやめてしまったまま深い眠りについた光の結晶。太陽の残像。
決して手の届かない、その愁いさにボクは魅了されてしまっているのだ。
無論、あれがただの鏡であり、太陽無しではただの石ころに過ぎないことも知っている。
しかしそんなことは、どうでもいいこと。
ほらよく言うでしょ、恋は盲目だって。
ふと気がつくと人気のない歩道に猫が一匹いる。
2階からでも、よく判るほどの鉛のように鈍い灰色と目の冴えるような純白の二律背反を背負う野良猫だ。
その猫はこちらに気づいているのかいないのか、ボクと同じように月を眺めていた。
歩道脇にある外灯の力無い明かりに照らされて、あの猫もきっと月に恋をしているのだろう。
くしゅん。
途端、猫がクシャミを一つする。
少しだけその猫に共感してしまったボクは、ほんの気まぐれから、昨日食べ残したうるめを猫に放り投げてみることにした。
魚を投げるという行動は何となく新鮮で斬新だ、などと思いながらアスファルトに魚が落下するのを見送る。
妙な回転を掛けながら月の光を反射し、拡散させていく魚の銀色は、意外にも綺麗なものだった。
カメラのシャッターを切ったかのような、パンという乾いた音が人気のない風景に響き渡る。
猫は気づく。
しかし余程、月に見惚れていたのか猫は、今晩のごちそうが何処に落ちたのかよく分かっていない。
心配してボクが見ていると、約10秒ほどで自慢の鼻をたよりにごちそうにありついた。
魚を食べる猫。
それを眺めるボク。
お互いの集中が、一層この空間の逸脱を濃くする。
ボクと猫しかいない空間。
ボクと猫が1で、その他は0だ。
そんな額縁の中で、ボクらはまるで絵画のようだ。
魚を食べ終えると猫はこちらに振り向く。
どうやら最初からボクには気づいていたようだ。
猫とボクの目が合う。
一瞬。
その真ん丸で愁いに濡れた瞳は、今宵の月に酷似していた。
おわり
曲掲載(朝風用に書いたもの)
「op.3 sanctuary.mp3」をダウンロード
(1/2) 次»
コメント(2)|コメントを書く
カテゴリー一覧
最近のコメント
このブログを友達に教える