鴻上尚史『天使は瞳を閉じて』の思い出

 高校演劇の生徒の日常は大変だ。まず十分な練習場所がない。以前顧問をしていた頃は幾つかの学校に行って、演劇未経験の顧問の何かの手助けにになればと指導の真似ごとみたいなことをしたが、たとえば、体育館のステージだったりする。バスケやバレーの声の中での練習。そして、そのステージで学校公演。体育館のステージは演劇には向かない。声が届かないし、ましてや雨でも降れば、雨音が声を消す。加えて、貧弱な照明器具。

 そういう過酷な状況で頑張っている演劇部員に、卒業する時に満足いける舞台で上演させてあげたい、と、「卒業生公演」を始めた。その最初の舞台が『天使は瞳を閉じて』だった。鴻上氏は快く上演許可をくれた。その許可はコピーしてみんなに配った。本物は切望したキャストの一人にいった。

 この時のメンバーは安心院や三重からも参加してたけれど、みんな懸命に取り組んだ。凄い連中だった。高校生だけではキャストが埋まらなかったので、顧問も参加した。制作は、顧問劇団「Officeせんせいしよん」。練習場所は大分の上野の森の「出会いの村」。

 「出会いの村」は、才気煥発の糸永という教師が紹介してくれた。糸永に連れられて「出会いの村」の村長の安東静夫さんに会った。芝居の練習には申し分のないスペースを彼は家の地階に持っていて、「あなた達が使ってくれるなら、あれも喜ぶでしょう」と感激的な言葉で簡単に許可してくれた。それから安東さんとは芝居以外での付き合いがあった。感謝に尽きない人だ。

 最終的に福岡から照明の人間を呼び(彼は、生徒が数週間かけて作った装置を、重すぎて運べないので、簡単に作ってしまった)、どうにか上演できた。おそらく高校演劇ではできない舞台だった。

 高校生はある程度環境を整えればとてつもない能力と行動を発揮する。高校生畏るべし。無限の可能性を秘めている。侮ってはいけない。そういう存在として向い合わないと。

 以上、思い出の一部でした。

 

日記・コラム・つぶやき
2008/01/13




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