んの発音フランス語を勉強していちばん困惑したのが「ん」の音と「ら」行の音だった。
フランス語ではHは発音されない。そのかわりにRの音がまるでHのように聞こえる。
これは、舌を丸める代わりに、口の中いっぱいに広げ奥の方を膨らませてRの音を出すからで、聞きようによっては、Hに近い擦過音になる。この音を出すのと聞き分けるのが一番やっかいだった。
しかし一般には「ん」の音の方がよく話題にされる。あの鼻に抜ける独特の音が、フランス語の雰囲気を醸し出しているといってもいいからだ。この音も日本人には難しいと言われている。それには理由がある。日本人の「ん」の発音は、実は音声学的には4通り以上もあるのだ。
「ん」の発音は、前後に続く音や発音速度との関係で舌の位置が変化することによって、明らかに違う音として発音される。しかし、我々はその音をすべて一つの音として認識しているということらしい。日本人に、LとRの区別がつかないのと同じ理屈だ。
しかし、「ら」行の音の場合は、もともとRに近い発音しかないということが区別のつかない理由だけれど、「ん」の場合はちょっと事情が異なる。
先に触れたように、我々が発音する「ん」の音は、前後の音や速度、話者の癖で実にさまざまな音として発音される。その中には、フランス語の鼻母音のような甘く鼻に抜ける音もしっかりと含まれているのだ。
音声学的にはいろいろと難しい定義があるが、わかりやすく整理しなおすと、次のようになる。ただ、これは正確なものではない。どちらかと言えば、後続音によって音が変化するということを意識した方がいいかもしれないのでご注意のほどを。
「ngの”ん”」― 例:考える ングと発音
「nの”ん”」 ― 例:簡単 舌が上の歯につく
「mの”ん”」 ― 例:乾杯 唇がくっつく
「無音の”ん”」 ― 例:関心 唇も舌もどこにもくっつかない
このうち、フランス語のnの音に近いのは「無音の”ん”」だ。この場合は、先行母音の口の形、舌の位置のまま鼻に音を抜くことによって「ん」の発音をする。だから、もし、後続音がある場合は、この甘く鼻に抜ける音ではなく、日本人が一般的に考えている「ん」の音のように舌が口の中のどこかにくっついた発音となる。
ところで、このフランス語のnの音だが、実は関西人にとっては非常に耳慣れた発音しやすい音なのだ。実際、自分がたまたま関西人であったことが幸いして、フランス語を勉強するとき、この音に関してはまったく違和感がなかったのに、ちょっと面食らった覚えがある。
たとえば、標準語の「○○をしたんだ」という表現は、関西弁では「○○したねん」または「○○してん」というふうになる。このときの最後の「ん」はすぐ前の「ね」や「て」の口
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