守り神 (超短編) ある日、蛸が家にやってきたのだそうだ。
「玄関の門柱にのってたの。にょろんと」
はじめて彼女の家に遊びに行ったとき、玄関の引き戸についているへんてこな飾りに見入っていると、彼女が話してくれた。
「その蛸が『先日のお礼に参りました。私を飯田家の守り神にしてください』って言ってね」
ちょうど日曜日だったので家族全員そろっており、その場で会議が開かれたのだが、誰一人、最近蛸にかかわった記憶がなかったので、祖父が代表して、何かの間違いではないかと蛸に話してみた。が、頑固な蛸は私が間違うわけがないと言ってきかない。
「もう全然話にならないから、玄関の戸をピシャって閉めてやったの。そしたら蛸が戸にはりついちゃって、そのまま守り神になっちゃったのよね」
「守り神なんだ、これ」
蛸と言われれば蛸にしか見えなくなったへんてこな飾りに僕は顔を近づける。
「うん。まあ自称だけど。あとで分かったことなんだけど、この蛸を助けたのは、向こうの筋の山田さん家のおばあちゃんだったらしいのよ。でも判明したときにはもう吸盤が取れなかったの。それが十五年前のこと」
かわいい話でしょ、と彼女は守り神の丸い部分をなでまわした。僕は神様に手を合わせてから、彼女の家に入った。
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