漆黒の瞳の行く先は 【17】

どんな時でも可愛かったあたしの弟。
「お姉ちゃん」とあたしの服の袖を引っ張りながらずっと後をついてきて。
浮かべた笑顔は消えなくて。
そんな弟が愛しくて愛しくてたまらなかった。


それなのに。
いつからかな。


あなたの瞳があたしを見るときの視線が変わったのは。
―――――それでも、あたしは、いつだって。



「陸、離して」
「やだ。何で」
「…ご飯、食べるから」
「何だよそれ」

そう言ってちょっとだけ笑った陸は、あたしの肩に自分の額を乗せると溜息をついた。
あたしの腕を掴んだまま、一向に離してくれる気配は無い。
寄せ合った体が、熱くて熱くて。
もうやだ。離して。これ以上あたしを混乱させないで。

「ねぇ、陸。離してって言っ…」
「ちょっと黙って。聞いて」

あたしの言葉を遮った陸は、ゆっくりと顔を上げた。
火照った頬。苦笑いのように弱々しく笑う表情。
そのどれもが、あたしを釘付けにさせて。


「少しだけで、いいから」


そんな顔しないで。
そんな目であたしを見ないで。
どうしようもなくなる。どうすればいいのか分からなくなる。

「―――…っ」

握られた腕から伝わってくる。
目、そらさないで、って。ちゃんと見て、って。

「…ずるいよ…!」

もう何も言えなくなった。
溢れてくるのは涙だけで。陸の顔がゆがんで見えた。


――ああ。
陸の目を見つめるだけで。

たまらなく切なくなってしまう、あたしは、きっと。

漆黒の瞳の行く先は
2007/03/18




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