漆黒の瞳の行く先は 【16】目の前にあるのは、小麦色の肌と、閉じた瞳から伸びる長いまつげ。
呪ってやりたいほど整った顔立ちをしてる義理の弟。
「陸。ご飯。起きろ」
体をゆすっても叩いても彼は一向に目を開けてはくれない。
ちょっとだけ表情をゆがめたかと思うとすぐにまた元に戻る。
これじゃ埒があかない。
「…起きろっつってんのに…」
起こしてって言ったのはそっちだろ。
恨みがましく陸を睨んでみたけど、そんなのは何の力にもならなくて。
何だかどうでも良くなったあたしは、先に一人で食べることにした。
まぁ合宿終わってすぐだし疲れてるんだろう。
「…あたし、先に食べとくからね?」
それだけ告げ、一階に戻ろうと思い、立ち上がったところで。
「…は?」
あたしの腕は、寝てるはずの弟に掴まれた。
閉じてた瞳はしっかりと開いていて。腕に込めてある力は半端なくて。
あたしは動けなくなった。
何か言おうとしても言葉がのどの奥でつっかえている。
…何?起きてんの?寝ぼけてんの?どっち?
やっとのことで出たものは、しぼり出したような情けない声。
「…何?起きるんならさっさと起きてよ」
声が、かすれて。陸を見つめ返す。
「…姉貴」
どこか切ない声だった。
ぐいっと腕を引っ張られて、何の心構えもしていなかったあたしの体は簡単に倒れこむ。
「何すんの」と声を荒げて強く睨みつけたあたしに、陸は何でもない事のようにさらりと言った。
「キスして」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
互いを見つめる瞳がかすかに揺らめく。潤む。
「…何、それ」
弟相手に。
陸相手に本気で動揺してるあたしは馬鹿ですか。
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