漆黒の瞳の行く先は 【12】

心臓が止まるかと思った。バクバクという鼓動が自分でもはっきりと感じられる。
確実に脈は速くなってるハズだ。
陸の言葉が胸の奥に突き刺さるようだった。

「…ありがとう」

…これでいいんだよね?
陸には見えないけれど、あたしは微かに微笑む。
素直に嬉しかった。こんなに嬉しいこと、今までになかったってくらい。
あたしは陸にとって、害でしかないとずっとずっと思ってたから。

「オイオイ、勘違いすんなよ」

唐突、だった。
電話口で、陸は苦笑しながらあたしに告げる。
声はやっぱり涙声。

「好きって言うのは家族としてなんかじゃない」

きっぱりと言い切った陸。
思わずケータイを落としそうになる。
家族としてじゃないなら何なの?姉としてって事?

「初めて会ったときから、俺にとって姉貴は姉貴じゃなかった」

姉貴は姉貴じゃない…?
何気なく見つめてた髪の毛の先。
もちろんそこには答えなんてなかった。
あたしは、何も言わずに陸の言葉の続きを待つ。

いくばくかの間を置き、陸はやっと口を開いた。

「…いい加減気付けよバカ」

すねたように、彼は言った。
涙でかすれた声は、未だにそのまま。
まるで、寂しくて寂しくてたまらない小さな子どものよう。
周りの目も気にしない、ワガママな子ども。
ふと見つめた陸のマグカップは、いつもより数十倍彼のことを待ってる気がした。



「誰よりも大切な女の子は、姉貴だけだっつってんの。
わかる?」




…意味だけなら、理解できた。
そんなことを言う陸の真意はわからなかったけど。

漆黒の瞳の行く先は
2007/02/03




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