カベセオという名の挑発

 交差する視線。頷き合う二人。ブエノス・アイレスのミロンガでは、男性が女性を誘う時、「カベセオ(cabeceo)」という方法を一般的に使う。カベセオは、スペイン語の名詞「cabeza(頭)」や、動詞「cabecear(頭を振る)」から派生した単語で、ミロンガで男性が誘い、女性が了解する”合図”として機能する。具体的には、ダンスフロアを挟んで男女それぞれが分かれて座り、男性が踊りたい女性にシグナルを送り、女性がそれを了解した後、男性は席を立ち、女性の前まで迎えに行く。合図の仕方は、お互いに見つめ合うことを基本に、頷いたり、ウィンクするなど様々な方法が存在する。


 これに対して日本では、カベセオはせず、男性が女性の前まで歩いて行き、踊りに誘うのが一般的だ。筆者の経験では、イタリアやフランスなどの欧州、米国、韓国などのアジアでも、普通はカベセオを使わず、日本と同様の方法を採る。アルゼンチンタンゴを、世界的な文化と捉えるならば、男性が女性の前まで誘いに行くに行くことの方が、グローバルスタンダードなのかもしれない。


 カベセオの長所として高く評価されるのが、第三者には誘い誘われるプロセスが明確に可視化されないため、女性は踊りたくない男性とは視線を合わせなければ誘われる心配がないし、、男性も人前で断られ、ばつの悪い思いをしなくてもいい点だ。この特長ばかりが強調されがちだが、カベセオの起源から考えれば、「効率性」こそが最大の利点だろう。男性はダンスフロアを横切り、テーブルの隙間をぬって、女性を誘って回る手間がかからず、混み合ったミロンガであればあるほど、その効果は絶大だ。

 カベセオをミロンガに導入する上で、解決すべき課題がいくつかある。まずスペース的な制約だ。カベセオが成立するには、ダンスフロアを挟んで男女がそれぞれ向かい合って座ることが不可欠だ。同時に、男女それぞれが異性の全体を見渡せるように、ある程度離れる必要がある一方、視線を送り合うためには遠過ぎてもいけない。皆が同時にパートナーを探す必要があるため

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首都圏ミロンガ情報
2010/02/16




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