【第5章 男と女】
いつしか女装をしなくても、過ごせるようになって2ヶ月目に入っていた。
今までの生活の中では考えられないぐらい、女装から気持ちは遠ざかっていた。同じことの繰り返しで、毎日が退屈と言えば退屈だけど、手を抜けば叱責の声が飛ぶし、丁寧にやればきちんと評価された。
そして道場での修業の中身に「職業スキルアップ」というものが組み込まれた。
社会に帰っていく時に、何のスキルもないものは結局もとの生活に戻ってしまう、そのために「運転コース」「医療事務会計コース」「パソコンコース」「工事・溶接コース」のようなものがあってフォークリフトや自動車の2種免許を目指すもの、ワード・エクセル・パワーポイントなどを学ぶものがあり、「カウンセラーコース」を選んだ。
「もうすぐ1時だわ、早くしなくちゃ」
「やあ久しぶり、これからですね」
そんな言葉をかけた相手は由紀さんだった、彼女もカウンセラーコース。一緒に指定された第6修法室に向かった。
講師は、なんと教務主任、あのプロレスラーのような体格の女性だった。
これからカウンセラーコースとして、4時間15回の内容で学び、協会指定の認定試験を受けると説明があった。僕と由紀さんのほかにも6人ばかりのメンバーがいた。
僕はこれまでに、産業カウンセラーの資格を取得していたので復習程度のつもりでいた。しかし、初回から理論はわずかで、二人一組になって設定された課題に沿って、交互にクライエントと相談者になってロールプレイを続けるハードなものだった。
僕の相方は、どういうわけか由紀さんだった。幼い頃の恐怖体験や、家族との出来事、自分への不満、果たせなかった希望、気がかりなまま手をつけていない問題など、もう5回目ぐらいには何も新しいことがないぐらいいろんなことを話し、聞かされた。
どう相手を受容し、そして課題に対してどう自己決定するか、それを相手自身の気持ちで
語らせる、もう由紀さんのことは家族のように何でも知っている、僕のことも由紀さんは知っている。S的な由紀さんと、ややM的な僕、女装のことも知られている。
教務主任から「総括訓練」の参加者が発表された、僕と由紀さ