尚美のポートレート(新バージョン)【尚美のポートレート】新バージョン
【あらすじ】
若手の画家が、一人の少年と出会う、少年の希望で彼が女装してモデルになった絵を描き、それが美術展で入選する。そしてお祝いの酒に酔い、女装した少年と結ばれてしまう。しかし少年は逢うたびごとに女性として成長する。その少年が秘めていた謎がわかるときがくる、10年という時間の流れを経て二人の約束が果たされた時、せつない恋が終わる。
第1章 霧の中の出会い
冬の午後は3時を過ぎるとどんどん冷え込んでくるため、いつもならスケッチを終えて帰り支度をしていただろう。
その日は朝から霧が発生して、お城の公園の中でも視界が遮られていた。
2月にしてはその分だけ気温は高く、私こと坂崎隆一は松本城のデッサンを仕上げようとしていた。その時、私の後ろに一つの人影が近づいて来た。
こうしてデッサンなどしていると、後ろから覗きこむ人が結構いるのだ。しばらくすると、その人影が話しかけてきた。
「お兄さん、絵描きさんなの。僕には書けないぐらい、素敵なデッサンですね」
「ほんの下書きでね、今日はこれぐらいにしておこうかと思ってるんだ」
「お兄さんは、いつもどんな絵を描いているの」
「一言で言うと風景、野や山や自然と、古くからある建造物かな」
「どういうところが気に入ってるの」
「山や大地、それと古い建物のもつ美しさかな」
「お兄さんは、人やモデルなんかは描かないの」
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