尚美のポートレート
【あらすじ】
若手の画家が、一人の少年と出会う、少年の希望で彼が女装してモデルになった絵を描きそれが美術展で入選する。そしてお祝いの酒に酔い、女装した少年と結ばれてしまう。しかし少年は逢うたびごとに女性として成長する。最後はその少年が秘めていた謎がわかるときがくる。
第1章 霧の中の出会い
冬の午後は3時を過ぎるとどんどん冷え込んでくるため、いつもならスケッチを終えて帰り支度をしていただろう。その日は朝から霧が発生して、お城の公園の中でも視界が遮られていた。2月にしてはその分だけ気温は高く、私こと坂崎隆一は松本城のデッサンを仕上げようとしていた。その時私の後ろに一つの人影が近づいて来た。こうしてデッサンなどしていると、後ろから覗きこむ人が結構いるのだ。しばらくすると、その人影が話しかけてきた。
「お兄さん、絵描きさんなの。どんなにがんばっても僕が書けないぐらい素敵なデッサンですね。」
「ほんの下書きでね、今日はこれぐらいにしておこうかと思ってるんだ。」
「お兄さんは、いつもどんな絵を描いているの。」
「一言で言うと風景、野や山や自然と、古くからある建造物かな。」
「どういうところが気に入ってるの。」
「山や大地、それと古い建物のもつ美しさかな。」
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