イタリア映画「道」

   イタリアの荒れた海辺の村に住む娘ジェルソミーナを、ある日、大道芸人のザンパノーが買いに来た。今まで助手に使っていた彼女の姉が死んだからだ。

  ザンパノーは乱暴者で野獣のような男だった。旅に出発したその日の夜にジェルソミーナは強姦同様に体を奪われて、一時は悲しみに沈んだが、やがて彼に対して女らしい愛情をひそかに抱きはじめる。

  しかしそんな気持ちにザンパノーが気づくはずもなく、金があれば酒を飲み、娼婦を買い、ついにたまりかねてジェルソミーナは彼のもとを逃げ出したが、町で綱渡りを見物したあと発見され、手荒く連れ戻されてしまった。

  背中に天使のような羽根をつけて空中高く綱を渡っていた男はキ印というあだ名で、小さいバイオリンから妙なるメロディーを奏で出すこの男と、その後ザンパノーと一緒に加わったサーカス一座で知り合った。なぜか最初から男二人は仲が悪く、それが傷害事件にまで発展して、ザンパノーは留置場にほうり込まれてしまった。

  それをチャンスに彼から離れようと考えたジェルソミーナを、その夜やさしくさとしたのはキ印だった。「道ばたの小石だってきっと、誰かの役に立つようにと神様は創られたのだ」と。

   それならば、たとえ報われなくとも自分はザンパノーのそばにいて彼の役に立とう・・・・みんなから馬鹿にされるジェルソミーナにもやっとひとつの生き甲斐が生まれた。

  しかしザンパノーの生活は相変わらずで、ある夜親切に泊めてくれた尼僧院から聖器を盗み出そうとする有り様である。そればかりか、人気のない田舎道でバッタリ出会ったキ印を、誤って今度は殺してしまった。

   ジェルソミーナの気が狂ってしまったのはその事件以来であった。もはや大道芸の助手としても役に立たなくなった彼女を、ザンパノーは彼女が眠っているすきに雪の残る道に捨てた。

   数年がたった。年をとってうらぶれ果てたザンパノーは、海岸の町で、ジェルソミーナの死を聞かされた。夜、酔いしれて砂浜に出た彼は、見上げた空の星に、はじめて孤独の恐ろしさを知った。自分にとっての救いがジェルソミーナだったことに気づいて、野獣のような目に彼はとめどない涙を流すのだった。

映画・テレビ
2006/06/18




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