『メビウスの輪』vol.15
音有勇第3話
妻がいなくなってから家の事を妻の様にこなす娘百合。
…特に食事の時に使う箸の使い方を見ているとつい妻を想像してしまう。
…容姿も妻にそっくりになってきてふと妻と勘違いするぐらいで、とても嬉しかった。
…妻のDNAを受け継いでいる子供がいる事は唯一の救いだった。
しかし頑固者の俺は態度には現さず、ヒステリックな廃人を演じ続けていた…。
エミリーは編み物が趣味で、良く百合に教えては二人仲良く楽しんでいた。
…そして百合が初めて編み上げた自慢の手袋が、ある日玄関に置き去りにされているのを見つけた。
…なんだか胸騒ぎがする。
その悪い予感は的中してしまう。
…その日夜遅くなっても中々百合が帰ってこなぃ。
…心配で心配でたまらなぃ。
これで娘まで失う事になったら…俺はどうやって生きて行けばいいのだろう。
…しかし健次、裕三に知られまいと冷静を装い玄関近くでこっそりと帰りを待っていた…。
手袋を良く見ると中に手紙の様な紙切れが入っていた…その手紙を開くと百合の字で
『GIVE ME,わたあめ』
と書いてあった。
そういえば、食後恒例のアメリカンクラッカーをやったあと、ざらめ糖ダケでわたあめが作れる事を知っていた俺は、子供達を喜ばせようと実験的にわたあめを作った事があった。
…思いの他うまく作れたので調子に乗ってたくさん作った。
…みんな凄く喜んで食べてくれてなんだか鼻が高かった。
今思うと、あの頃が一番幸福に囲まれていた時間だったのカモしれなぃ。
百合はどんな想いでこんな紙切れを手袋に入れていたのだろう…なんだか自然と涙がこぼれ落ちた…。
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