タイムカプセル - 23

「お姉ちゃん、すごいじゃない。びっくりしたよ。急に、彼氏連れてくるなんて。」

「うん。私もこの展開にはちょっと驚いてる。」

「私のせい?」

 母が言った。

「お母さんのせいというか、何というか。ただ、今回こうなるとは思ってなかったかな・・・。」

「お母さんだってびっくりしたのよ。亜沙美の部屋に、いきなり知らない男が裸でいるんだもの。」

「ほんとなの? お姉ちゃん?」

「裸って、上半身だけでしょ? 大げさだよ。もう。」

「でも、お母さんも安心したわ。剛君、良い人じゃない。」

「うん。私も高感度抜群だと思った。」

 奈津美も言った。

「ほんと? ありがとう。そう言われると、私も嬉しい。」

 良かった。とりあえず、みんな剛のことを気に入ってくれたらしい。あれだけ盛り上がっているから、父だってきっとまんざらでもないはずだ。

「お姉ちゃん、剛君と結婚すんの?」

 と、奈津美が聞いた。

 そう聞かれても、まだ何と返事したらいいのか分からなかった。この段階では、まだ両親の承諾を得たとは言えないはずだ。もうちょっとだと思うけれど、まだだ。そう悩んでいると、いきなり隣で奈津美が叫んだ。

「お、お姉ちゃん。これー。」

 そう言って、私の左手を取った。まじまじと指輪を見ている。

「これって、婚約指輪なの?」

 奈津美が聞いた。

 母もその声に驚いた様子で、奈津美が持ち上げている私の手を見ていた。

「うん。今朝、もらったの。」

「す、すごーい。ダイヤ、かなり大きいよ。」

 奈津美は一人で興奮していた。

「もう、お返事したの?」

 母が聞いた。

「うん。」

「そう・・・。」

 母がしんみりと言った。

 気が付くと、母が泣いていた。それにつられて、私も泣いた。奈津美までが泣いていた。女3人、キッチンで夕食の支度をしながらひとしきり泣いた。

「亜沙美、おめでとう。」

 母が、キャベツを切りながら、私のことなど見ることもなく、キャベツに向かって言った。

「お姉ちゃん、おめでとう。」

 奈津美も同じように、鍋の中のジャガイモに向かって言った。

「ありがとう。」

 私は、剛にもらった指輪を見ながら言った。

 この家は、男1人女3人だから、いつも私たち3人が中心になって全てが回っていた。私たちはまるで姉妹のようにいつも一緒だった。私が東京の大学に行くことになって、その形が崩れたけれど、やっぱり私たち3人はこうやって一緒にいるのがしっくりくる。母や奈津美の気持ちが、痛いように分かった。

2008/12/01




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