決断 ~1月18日・快晴~今年に入り、2度目の波の上宮に来た。
最近、お参りの人数が増えたような気がする。「困ったときの神頼み」と万事休した時には鳥居をくぐったけれど、勝手のいいわがままな己のことなど神が助けるものかとも思いつつ、それもお願いする厚かましさが後ろめたかった。
数年前「神社参拝」の案内を境内にみつけた。そこには「困った時こそ神様にすがりなさい。神様はあなたを見捨てないでしょう」とあった。そうなんだと己に都合よく解釈し、幾分、気も晴れて、それからというものはわだかまりもなく訪れるようになった。
10月の下旬、
「貴社とK社との取引はしない。懸案中のものは直接K社がやる」
と平河から一方的に宣言され、A社との取引途中であった取引を取り上げられた。
取引を整理する為に、俊介は2度とやるまいと決めていた年金担保の融資に手を出した。残金は自営業の再構築の資金にするために借入をした。
また、その資金を10月の終わりに与那覇社長に、4,5日ということで融通した金が返ってこない。11月、12月とその資金を運用する事もできず、持ち金も底をついた。毎日の必要な金も事欠くようになった。
与那覇社長は「明後日には」とか「来週は」とかいいながら、もう三ヶ月になろうとしている。万策尽きた俊介は、途方にくれた。
いままではお願いするものがあった。神に縋る具体的なものがあった。
しかし、きょうの俊介には具体的なものがない。ただ、ただ、助けてください、という以外にはない空しい願いだった。
拍手を打ち、拝殿を後にした俊介は、鳥居を出て境内を左に折れ遊歩道を歩き小高くなった展望台に出た。東シナ海がグッと那覇市内に向けて割り込んだ湾内の波は静かで通り過ぎてゆく南風も心地良かった。波の上ビーチではしゃぐ家族連れも俊介の目には虚ろに映った。
我に返ったとき、俊介は那覇大橋を歩いていた。風が薄くなった髪を乱してゆく。無気力が心地良かった。何も考える事が出来ない事が、今の俊介には幸せだった。
どうにもならない。
欄干に腕を置いて、遠く、遠く、慶良間の島影を見ていると、赴任してきた当時の事などが走馬灯のように巡っては消えた。左遷だ、将来が見えない等と世界の終わりのように考え、悩んだ事がなつかしかった。
甘い感傷が俊介の背筋を冷たく貫いた。
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