40年遅れの英国病

日曜日、私はいつものように夕方まで寝ていたのだが、携帯に父から三回ほど着信が入っていた。テレビで「25歳のめがねをかけた男が現行犯逮捕された」との報道を聞いたせいか、事件に巻き込まれたor加害者になったか心配になったらしい。

犯人は、理系大学院を卒業し(たにもかかわらず)、自動車工場でライン労働に従事する派遣社員だった。ここをとらえ、「小泉改革以来の格差社会の歪みを是正せよ。」だの「派遣業者・請負業者を規制せよ。手配師どもを血祭りに挙げろ。全員正社員にしろ。」という意見が多方面から出ている。

確かにこれは心情的には理解できるのだが、日本経済が製造業に依存しており、韓国・中国をはじめとする後発工業国と同じ土俵で競争を行わなければならない現状でとりうる選択なのだろうか。仮にそういった施策をとっても、主だった製造業はまた海外に生産拠点を移し、雇用が空洞化するに決まっている。これはなんとか命脈を保っている地方経済にとって致命傷となりかねない。(もちろん、派遣可能業種の制限、タコ部屋労働的な搾取の抑止、適正な契約手続の確保、労働者の安全・衛生面での保護などは強制力をもって徹底すべきだと思うが。)

我々は「経済大国日本の国民だから、当たり前に先進国並みの生活が送れる」という幻想を捨て、「(後進国の人間でもできる)付加価値の低い仕事をしている者は後進国並みの生活しか送れなくなる」という厳しい現実と向き合わなければならない。当然、そんな社会には格差もあれば、不満もある。今回は単独犯だったが、次回は複数犯、最後には暴動に発展するかもしれない。資源もなく金融・サービスだけでは国民全員を食べさせていけない難儀な国に暮らす我々は、この不愉快な選択をせざるを得ないのだ。

2008/06/10




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